Vol.53 池上彰さんと探究学習

ジャーナリストの池上彰さんが、高岡で講演してくださいました。池上さんとは、私がテレビ朝日にいた頃、番組で一緒に仕事をさせていただきました。今回の講演は、6年前に交わした約束を果たしてくださったものでもありました。
高岡市は今年度から、探究学習の強化に取り組んでいます。子どもたちが自ら問いを立て、調べ、考え、答えを探していく学びです。この方針を子どもたちや先生方、保護者の皆さま、さらには市民の皆さまと共有したい。そう考えて、池上さんに講演をお願いしました。演題は「これからの社会を生きる力とは」。お話を伺い、本市が進もうとしている方向とまさに一致していると感じました。
講演に先立ち、高陵中学校の生徒が探究的な学びの成果を発表しました。まず高岡高校の生徒がアドバイスをし、続いて池上さんご本人も感想を述べられました。一人ひとりの発表の要点を的確にとらえ、改善点を具体的に示されたのです。中学生に真摯に向き合う池上さんの丁寧な姿勢には、私も脱帽しました。
講演は生成AIの話にも及びました。AIは便利ですが、何でも頼ってしまうとさまざまな問題が起きる。AIは統計的にデータを処理しているので、ありきたりの質問にはありきたりの答えしか返ってこず、世の中にまったくないものは生み出せない。一方、人間は「こんなものがあればいいな。」という思いから、宅配便やネット販売のように新しいものを生み出してきた。だからこそ、まず自分で考えること、AIの使い方をしっかり考えることが大事だというお話でした。

ご自身の夢についても語られました。子どもの頃、新聞記者の本を読んで記者に憧れ、気象庁の予報官にもなりたいと思ったものの、高校で数学と物理が苦手で挫折。その後、政治経済の勉強が楽しくなって記者を目指し、NHKの地方局で台風の解説をする機会を得て、予報官の夢が形を変えてかなったそうです。夢は途中で変わることもある。好きなことを仕事にできるといい、と。
「なぜ勉強しなければいけないのか。」という問いには、「大人になれば本当に分かる。社会に出て苦労すると分かる。」と答えられました。海外では教育を受けられない人がたくさんいて、自分の名前を書けたことを喜ぶ人や、青空の下でもっと学びたいと願う人を多く見てきたそうです。日本には学習指導要領があり、どこでも同じように教育を受けられる。学校は、社会に出てから改めて学ぶ力の土台を築く場であり、学校での学びを社会や人生に結び付けることが「生きる力」につながる。「知識は決して盗まれることのない財産」という言葉が印象に残りました。
今年のノーベル化学賞受賞が決まった硤合憲三(そあい けんそう)さんの「思い込みはよくないが、思い入れは大切」という言葉も紹介されました。子どもの頃の夢はそのままかなわなくても、思い入れを持ち続ければ、やがて花開くことがある。あらゆることに好奇心を持ち、自分で学びたいと思うこと自体が力になる。それが、これからの社会を生きる力だと池上さんは語られました。
高岡高校の生徒からは「探究学習よりも教科学習の方が大事なのか。」という鋭い質問も出ました。池上さんは、教科で学んだ知識を使って考えを深めることが大切であり、探究で見えてきた課題に取り組み、高岡を、富山を、日本を、世界を少しでもよくしようとする中で、自分の生きがいが見えてくると答えられました。教科学習と探究学習は対立するものではなく、両輪なのだと改めて教えられました。
子どもたちが学ぶ喜びを感じ、自分の頭で考え、夢を持ち続けられる。そんな学びの場を、高岡でしっかりとつくっていきたいと思います。





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更新日:2026年10月16日