令和5年高岡市議会9月定例会
令和5年高岡市議会9月定例会市長提案理由説明
- 第一 市政の運営にあたって
- 第二 提出議案について
第一 市政の運営にあたって
一 はじめに
令和5年9月定例会の開会に当たり、提案理由の説明に先立ちまして、今後の市政運営に対する所信の一端を申し上げます。
去る7月12日夜から13日未明にかけて、大気の状態が非常に不安定となり、激しい雨が各地で猛威を振るいました。
本市では、土砂災害が発生するおそれが高まったことから、12日の23時に西五位、五位山地区の一部に避難指示を発令しました。その後、河川の水位が急激に上昇し、氾濫のおそれが高まる中、国土交通省富山河川国道事務所長から直接私へ、小矢部川において避難指示の基準である7.3メートルを超える予測である旨の連絡があり、翌13日の1時に、市内9地区において避難指示を発令しました。河川の水位上昇が続き、小矢部川では堤防が耐えられる水位である計画高水位9.13メートルに達することも想定される緊迫した状況が続き、同4時に長江観測所で過去最高水位となる8.81メートルを観測しましたが、朝にかけて水位は徐々に低下しました。
県内で初めて発生した線状降水帯による記録的な大雨となり、本市においては、人的被害こそなかったものの、住家をはじめとした建物への浸水や、農地の冠水、畦畔の崩落等の農地・農業施設被害、また、法面の崩落や土砂崩れによる道路等の通行止めなど、様々な被害が発生しました。被災された方々に、心よりお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復旧に向け、全力を尽くしてまいります。
浸水被害のあった地域では、復旧に向けて、地域の方々の共助による作業が進む中、本市から社会福祉協議会に要請し、7月15日からボランティアセンターを速やかに開設していただきました。泥出しや家財道具搬出などの活動に、市内外から延べ332名のボランティアの方々にご参加をいただきました。また、国においてもポンプ車を用いた排水活動を実施していただき、加えて、企業、県、災害時相互応援協定を締結している越前市をはじめ、様々な方から支援物資や寄附、見舞金をいただいており、この場をお借りし、ご支援いただいたすべての皆様方に心から感謝申し上げます。
本市としても、被災直後から土嚢袋や消石灰の支給、災害ごみの回収、道路等の応急修繕など、既定予算や予備費等を活用し、速やかな復旧に向け、可能な限り臨機の対応に努めるとともに、被災された方々に対する各種支援等を実施してまいりました。また、今回の災害では、本市を含め県内4自治体が災害救助法の適用を受け、更には、国に対して被災した地域の現状を訴えてきたこともあり、激甚災害に指定されました。今後とも、地域と一丸となり復旧に向けた取組を進めるとともに、全力を挙げて被災者の方々に寄り添った支援を進めてまいります。併せて、今回の災害での経験と検証内容を、今後に活かし、地域とともに防災体制の強化を図ってまいります。
さて、先月30日、北陸新幹線金沢・敦賀間開業に伴う定期便の運行計画が発表され、開業日が来年3月16日に決定しました。新高岡駅関連では、東京方面への直行便数がこれまでどおり維持されたことに加えて、新高岡駅と県庁所在地のみに途中停車する「つるぎ」速達便が1日5往復設定され、関西方面との利便性が格段に向上することとなります。関西圏との結びつきが強い本市においては、大変大きな意味を持つものであり、将来の大阪延伸を見据えても重要な足掛かりになるものと受け止めています。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置付けられた5月以降、インバウンドをはじめとする観光需要が全国的に増加しています。本市においても4年振りに、6月と7月の2回、合わせて5千人を超える乗船客を乗せたクルーズ船が伏木港に寄港しました。また、この夏、瑞龍寺と勝興寺の2つの国宝をはじめ、市内主要観光地には多くの観光客の姿が見られました。観光需要が回復する中、北陸新幹線金沢・敦賀間開業まで約半年、同年秋の北陸デスティネーションキャンペーンまで約1年となり、広域での効果的な観光PRも行いながら、「稼ぐまち」としての取組を加速させていくことが重要です。先月には、飛越能の玄関口として、七尾市と共同でJR東京駅前にあるKITTE丸の内で首都圏誘客促進事業を実施し、今月の15、16日には、JR福井駅前において、飛越能の各自治体と連携したイベントを開催します。また、11月に開催される全国宣伝販売促進会議における観光素材と魅力の発信や、旅行会社等と連携した観光・旅行商品の造成など、戦略的な施策を展開し、北陸、飛越能、そして高岡を選んでいただけるよう努めるとともに、市内全域へ経済効果を波及できるよう、本市における滞在時間や観光消費を増やす工夫を凝らしてまいります。
次に、地域課題の解決に向けた「挑戦」についてです。
更なる活性化を目指す中心市街地においては、高岡七夕まつりと連動し、公共交通の利用促進を目的とした「万葉線納涼まつり」が開催されました。また、その趣旨に賛同された加越能バスによる「路線バス 乗り方教室」も併せて開催され、新たな取組への挑戦の連鎖が生まれています。高岡まちなかスタートアップ支援施設「TASU」では、オープン以来、8月末までに、292件の相談が寄せられているほか、セミナー等のイベントには延べ832名の方にご参加いただいており、多くの方の挑戦の種を育む施設としてご活用いただいていることを大変嬉しく思っております。こうした中、TASUの支援のもと、市内空き店舗を活用し、飲食店を開業したいという夢を実現された事例も生まれました。これは、まさに私が理想としていた、市民の挑戦が、空き店舗という地域課題の解決に結びつく実例となりました。今後とも、多様な「挑戦」を支えるTASUの果たす役割や担う機能の認知度を高め、更なる挑戦の拡がりを加速させるとともに、次の挑戦につながる地域経済の「循環」を市民の皆様とともに生み出していきます。
安全で安心な医療提供体制に関しては、市民病院での分娩を来年度休止せざるを得なくなりました。改めて、市民、そして地域にとって必要な病院としてのあり方を考え、その役割を果たしていく必要があります。公立病院としての務め、また、地域の基幹病院としての役割を踏まえつつ、他の医療機関等との連携も図りながら、市民に必要とされる医療を提供する市民病院として挑戦してまいります。
持続可能な地域づくりに向けては、自治会をはじめ、各種団体の力を結集するとともに、あらゆる世代の住民の参画により、自ら地域課題を解決していく「多機能地域自治」が重要だと考えており、福田地区、牧野地区でその導入に向けた住民主体の取組が進められています。また、二塚地区、国吉地区では地域福祉の向上を、博労地区、川原地区では災害に強いまちづくりを目指し、それぞれの課題解決に向けた取組が展開されています。このような動きに呼応し、地域の主体的な活動をバックアップする拠点を整えてまいります。高岡のまちは、地域の方々の「ひとの力」によって支えられています。社会情勢の変化や人口減少等により地域課題が多様化してくる中で、地域の未来を見据えた新しい挑戦が各地域において進められていることを大変心強く思っています。地域の方々が挑戦し、自ら直面する課題を解決していくことで、市内全域で挑戦の連鎖が生まれるよう、それぞれの課題に応じた支援をし、高岡のまちを支える地域の主体的な挑戦を全力で後押ししてまいります。
二 市政運営の基本姿勢について
現在、総合計画審議会の各専門部会において、アフターコロナの視点から、第4次基本計画を補完する施策やその進め方をご議論いただいています。その中では、ヒト・モノ・コトの「循環」を生み出していくことで、コロナ禍で顕在化した課題にしっかりと対応し、将来に向けた地域社会・地域経済の新たな活力を創出していくことが大変重要だというご意見をいただいています。市民の皆様とともに拡げ、加速させてきた「挑戦」に更なる付加価値を加え、次につなげていくことが、ヒト・モノ・コトの「循環」を生み出していくことにもつながります。「循環」の創出を意識し、「持続可能な未来都市 高岡」の実現に向け、高岡が抱える課題等に市民の皆様とともに挑戦してまいります。
第二 提出議案について
次に、ただいま上程されました予算議案6件、条例議案9件、その他議案7件、認定議案2件の計24件についてご説明申し上げます。
議案第50号から第55号までは、一般会計及び特別会計の補正予算です。
補正予算の規模は、
一般会計 20億3,816万3千円の増額
特別会計 6億3,960万2千円の増額
総計 26億7,776万5千円の増額です。
今回の補正予算では、7月に発生した大雨による被害の復旧費用を計上するほか、災害情報システムの構築や排水ポンプ車の購入など、今後の災害を見据えた対策を行います。
併せて、移住の促進やインフルエンザ予防、低炭素社会づくりの推進のほか、市民病院において医療機能向上のために必要な設備の充実を図ります。
以下、その主な内容について、ご説明申し上げます。
災害復旧の取組については、被災した農地、道路等の復旧や災害廃棄物の処分を行います。また、本市独自に「一部損壊」の被害を受けた住宅の応急修理や、被災された中小企業者の事業継続に必要な設備更新等の費用に対し、支援を行います。
加えて、今後の大雨等の災害対策として、気象状況、被害やその対応状況、避難所の状況などを一元的に管理し、情報共有できる災害情報システムの整備や、浸水への備えを強化するための排水ポンプ車の購入のほか、不測の事態に迅速に対応するため予備費を計上します。
次に、高岡市内への移住・定住の促進及び中小企業等における人材を確保するための支援金について、上半期で既に見込みを上回る申請があったことから所要の経費を増額いたします。
また、高岡駅前エリア内の大型建築物の所有者等を対象に、国のZEB化補助事業の円滑な利用につなげるため、省エネ診断・ZEB化可能性調査にかかる費用の一部を支援します。
エネルギー価格の高騰が続いている現下の状況に鑑み、福祉サービスの安定的な運営に影響がでないよう、高齢者・障がい者施設並びに幼児教育・保育施設及び放課後児童クラブに対し、激変緩和策として10月以降の支援を行います。
加えて、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行の抑制等のため、小学生及び中学生並びに妊婦の方を対象にインフルエンザ予防接種費用の支援を行います。
市民病院においては、内視鏡手術システム等医療機器の更新、拡充を行い、医療機能の向上を図ります。併せて、省エネルギー化の機器の改修や、高齢化の進展に伴い増加している在宅療養患者を対象とした、訪問看護事業の拡充のためのシステム等の整備を行います。
そのほか、昨今の著しい物価上昇傾向下においても、現在予定されている学校再編等を着実に進めていくため、また、今後の市債発行を抑制する観点から、令和4年度の決算剰余金の一部を公共施設等整備改修基金に積み立てます。
続きまして、議案第56号から第71号までの条例その他の議案について申し上げます。
条例議案につきましては、市民が主体的に地域づくりを行うための活動及び交流の場として、市立公民館施設に地域交流センターを設置するための高岡市地域交流センター条例の制定など、9件を提案しております。
その他議案につきましては、旧高岡市営長慶寺室内プール及びスポーツ・レクリエーションホームの解体工事に係る工事請負契約の締結など、7件を提案しております。
認定議案2件につきましては、令和4年度の本市企業会計に係る決算、並びに一般会計及び特別会計の歳入歳出決算を、監査委員の審査意見書を添えて認定に付するものです。
以上、提出いたしました諸案件についてご説明申し上げましたが、何とぞ慎重ご審議の上、よろしくご賛同賜りますようお願い申し上げます。
更新日:2024年03月25日