令和3年高岡市議会6月定例会
令和3年高岡市議会6月定例会市長提案理由説明(抄)
市政の運営にあたって
令和三年六月定例会の開会にあたり、提案理由の説明に先立ちまして、私の市政運営に対する所信の一端を申し上げます。
新型コロナウイルス感染症への対応について
まず初めに、新型コロナウイルス感染症への対応についてであります。
国では現在、全国十都道府県で緊急事態宣言が発令され、また、八県でまん延防止等重点措置が実施されています。県内でも感染者数や入院者数の増加が続いており、感染者における変異株の割合が多く占めるようになっております。このため、四月には県のロードマップの警戒レベルがステージ二へ移行されており、さらに先月二十一日には「富山県感染拡大特別警報」が発出されるなど、予断を許さない状況が続いております。
本市では、先月初旬に、延期していた新成人の集いを、感染防止対策を徹底した上で実施いたしました。また、昨年、やむを得ず中止とされた高岡御車山祭りや伏木曳山祭りなど各地域での祭礼行事についても、万全の感染防止対策の下、地域の関係者が一丸となって工夫を凝らし、伝統を継承する新しい試みを実践されました。
一方、市内でもクラスターの発生が確認されるなど、厳しい状況もございました。市民の皆様には、これまで以上の高い緊張感をもって、マスクの着用、三密の回避等の基本的な感染防止対策の徹底はもとより、感染リスクの高い行動の回避の徹底をお願いいたします。
また、新型コロナワクチンの接種については、先月から高齢者を対象とした接種を開始いたしました。予約申し込みが集中し、予約の電話がつながりにくくなるなど、市民の皆様にはご心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。医療機関等のご協力をいただきながら、集団接種の実施や個別接種数の拡大を行い、七月末までに希望するすべての高齢者の接種を完了させる体制を整えております。今後、富山県において、県西部に一か所の高齢者を対象とした集団接種会場を設置されますとともに、本市においても、高岡市医師会など医療機関等のご協力を仰ぎながら、接種機会の拡大や予約方法の改善に努めてまいりますので、市民の皆様には、落ち着いた行動をお願いいたします。
東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた本市の取り組みについて
次に、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた本市の取り組みについては、去る四月には、市内でバドミントン日本代表の強化合宿、先週には聖火リレー点火セレモニーが開催されました。また、ホストタウンとしてレスリング競技を中核としたポーランド共和国との相互交流を深め、来月には、ポーランドのレスリングチームの事前合宿が実施される予定となっております。
今大会の成功と関係者の方々のご活躍を期待しております。
市政運営の基本姿勢にあたって
市長就任以来、三期十二年、市民の皆様、市議会の皆様、多くの方々のお支えにより、任を務めてまいりました。就任した年は高岡の開町四〇〇年という記念すべき年にあたり、市民生活の中でこれまで長く引き継がれてきた歴史や文化、ものづくりの伝統に改めて光が当てられた年でありました。同時に、北陸新幹線の開業を目前に控え、新たな時代への扉が開かれることに大きな期待が高まり、新しいまちづくりへの息吹を感じた時期でもありました。
歴史と伝統を受け継ぎ、新たな時代へ向かうエネルギーを発展させ、「元気なふるさと高岡」の実現を図るべく、市民、地域、事業者の方々とともに「まちを磨き、魅力をつなぎ、未来を創る」、創造への取り組みを進めてまいりました。
本市は北陸自動車道を東西軸、東海・北陸、能越自動車道を南北軸とする高速交通の結節点に位置し、環日本海に開けた伏木港を有する地の利を有しています。そして、北陸新幹線の開業を契機とする高岡駅・新高岡駅周辺の整備、関連道路整備などの時の利を生かし、都市基盤の整備を積極的に進めてまいりました。広域交流拠点となる新高岡駅周辺と日常の交流拠点である高岡駅周辺が一体的に機能するよう、両駅を結び、まちなかエリアや歴史的な町並みエリアへ延びる都心軸に高次都市機能の集約を図って都市構造の再構築に努めました。さらにこれらの都市インフラを活かしながら、高岡砺波スマートインターチェンジや新たな産業団地等を整備し、企業誘致の促進などを通じて新たな産業集積を図ってまいりました。これら、飛越能の玄関口としての広域交流拡大や産業振興の取り組みにより「都市の強み」となる都市基盤を確立することができました。
一方で、開町四〇〇年をきっかけに歴史都市高岡としての取り組みに磨きがかかりました。この間、二つの日本遺産ストーリーの認定や、高岡御車山祭のユネスコ無形文化遺産登録、山町筋に続く金屋町や吉久の重要伝統的建造物群保存地区選定、国名勝有磯海の指定、高岡城跡の国史跡指定などを受けることが出来ました。本市の歴史文化資産の魅力が国内外に認められたことを大変誇らしく思っております。加えて、今春には、重要文化財である勝興寺の「平成の大修理」も完了し、国宝への期待も高まっています。これらをバネに、世界文化遺産登録も意識しながら、文化資産を地域まちづくりの核として幅広く保存・活用してまいりたいと存じます。
また、歴史に培われた伝統の技は、高岡の発展を目指すシンボルとして「平成の御車山」に結集され、伝統技術と先端技術を融合して、「国宝法隆寺釈迦三尊像」の再現が実現しました。高岡のものづくりの高い技術水準が世界に示され、文化財復元・修復の新たな分野を拓くこととなりました。これまで幾多の困難を乗り越え革新してきた高岡のDNAは、若い職人や作家の皆さんへと脈々と引き継がれ、今に息づいております。
これらの歴史・文化は、高岡の産業、なかんずくものづくり産業に支えられ、またこれらがものづくりを磨き、価値を高めるという好循環の中で、ともに発展してまいりました。
今、高岡のものづくりは、ものをつくることに留まらず、その制作過程の体験や見える化を通じて、多くの人々を高岡に引きつけ、観光と融合した新しい展開が生まれています。
これらを通じて拡大する交流人口、関係人口は、わが国が人口減少という構造的な課題に直面している中、地方創生の目指す移住定住の促進、まち、ひと、しごとづくりの基本となるものであります。私は、この地方創生の展開に大きな期待を寄せてきました。これまでも多くの地方振興構想が提案されてきましたが、今回の地方創生においては、大都市圏の経済発展の日本全体への波及に期待するのではなく、地方が自らの自立的な力により発展することを通じて、国全体の活性化を目指すものであり、地方を起点とする理念によって貫かれております。
そのためには、地域がそれぞれの特性を発揮し、魅力的なまちづくり、しごとづくり、そしてひとづくりを進めることが重要であります。本市では、新産業創造プラットフォームの推進により、創業から研究開発、販路拡大までの各段階の企業ニーズに対し、産学官金などの関係機関が一体となってワンストップで対応してまいりました。また、市民が主体となり、企業、大学、地域、行政が互いに知恵を出し合い、地域課題の解決を図る「共創」のまちづくりの考え方に基づいて、市民共創チャレンジ事業や共創ビジネス研究所等の事業に取り組み、新たな起業や活動を創出し、多くの成果をあげてまいりました。今後の、市民が主役の地域づくりの基盤を構築することができたと考えております。
これらを踏まえて現在、第二期高岡市総合戦略「みらい・たかおか」を推進中であり、まち、ひと、しごとづくりに一体的に取り組み、特に「ひと」に着目した「未来を拓く子ども、挑戦する若者、きらめくまち」の実現を目指しております。中でも地域の未来を担う子ども達の教育の充実は喫緊の課題であります。今後十年を見据えて、学校再編の方針を定め、五位中学校区をはじめとする六中学校区において再編統合を進めることといたしました。また、市内全小中学校において小中一貫教育を推進し、国吉中学校区では、県内初の義務教育学校を開校いたしました。加えて、国のGIGAスクール構想に基づき、一人一台学習専用端末の配置などの教育環境の充実に取り組んでまいりました。
これらの総合的、戦略的な取り組みにより市民の暮らしの質や豊かさを高め、地方創生の実現を目指してまいりたいと考えております。
さらに地方創生の実践は、高岡市のみならず、広域的な見地から取り組むことが相応しいと考え、北陸新幹線開業を契機に、より一体的な経済・生活圏となった富山県西部地域において「連携中枢都市圏」を形成いたしました。
今年度からは第二期とやま呉西圏域都市圏ビジョンが始動しており、これまで築いてきたとやま呉西圏域の「つながり」を一層強固なものとしてまいります。
引き続き、県西部圏域の中枢中核都市として圏域各市と連携し、それぞれの魅力や資源を最大限に生かしながら、圏域全体の活力の向上を図り、地方創生の実を挙げてまいります。
また、将来にわたり必要な施設を維持していくため、公共施設の再編にいち早く取り組むとともに、財政健全化を図るため、平成三十年度から令和四年度までの五か年で、「財政健全化緊急プログラム」を推進しております。令和三年度当初予算編成において、プログラムに沿った構造的な収支均衡の達成に一定の見通しがたったところであります。加えて、令和二年度では、今後、予定される公共施設整備に向けた基金を新たに積み立てることができ、決算においても、将来の施策のための一定の財源を確保できる見込みとなっております。市民の皆様には、これまで大変厳しいお願いもしてまいりましたが、財政規律を維持しつつ、本市の次のステージに向けた新たな一歩を踏み出す土台が整いつつあると考えております。これも市民、関係の皆様のご協力のおかげであると改めて感謝申し上げます。
本市がまちの将来像として掲げる「市民創造都市高岡」の実現のためには、これまで築いてきた「都市の強み」、磨き上げてきた「まちの魅力」を最大限活用し、その地域に住む「ひと」が主役となって、創造的な取り組みを実践することが大切であります。地域に関わる個人や団体がそれぞれの個性を活かし、相互に刺激し合って新たな価値を生み出す「ひとの力」が、地域の経済やコミュニティを活性化する大きなエネルギーとなるものと確信します。
令和四年度から始まる総合計画第四次基本計画では、このような「ひとの力」に焦点をあて、時代の潮流であるSDGsやデジタルトランスフォーメーションなどの「変革」に挑戦することを通じて、次世代に共感を得られるまちづくりを進めることが肝要と考え、策定を進めております。
策定にあたっては、広く市民のご意見を伺いながら、市民一人ひとりが持つ能力を発揮し活躍できるまち、将来にわたって持続可能で進化し続けるまちとなることを期してまいりたいと存じます。
これまで皆様の多大なるご協力を賜りながら、時代時代の課題に積極的に挑戦し、それぞれに成果を得て、次代への道筋をつけることができたと考えております。お支えいただいた方々に深く感謝申し上げる次第です。
今、ポストコロナという時代の転換期にあたり、高岡の持つ可能性をさらに前へ推し進め、新たな課題に、新しい発想で挑戦する人材に期待いたしたいと存じます。
なお、現下の新型コロナワクチン接種及び感染防止対策、そしてコロナ禍を乗り切る経済対策に全力を尽くし、安全・安心のまちづくりの実現のため、職責を全うする所存であります。議員各位をはじめ、市民の皆様のより一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。
更新日:2024年03月25日