応急手当

更新日:2024年03月25日

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心停止以外の一般的な傷病に対して、その悪化を回避することを目的として、市民により行われる最小限の諸手当を応急手当といいます。
応急手当が必要となる事態は、日常発生する頻度が高いもので、市民の応急手当により、その悪化が回避される場合です。ただし、応急手当の実施に際して、救急隊や訓練された救助者への通報、あるいは医療機関への受診が遅れてはなりません。

1.傷病者の移動体位

救急隊や訓練された救助者が到着するまで、傷病者が楽になるような姿勢にして安静を保ちます。
ただし、車が通る路上など傷病者が危険な場所にいる場合は、安全な場所に移動させます。
また、心肺蘇生が必要となる場合には仰向け(仰臥位)にします。この場合、頭や首(頸椎)がねじれないように頭を支えながら仰向けにします。

反応はないが普段どおりの呼吸をしている傷病者で、嘔吐や吐血などがみられる場合、あるいは救助者が1人であり、傷病者のそばを離れる場合には、傷病者を横向きに寝た姿勢(回復体位)にします。回復体位では傷病者の下になる腕を前に伸ばし、上になる腕を曲げ、その手の甲に傷病者の顔を乗せるようにします。横向きに寝た姿勢を安定させるために、傷病者の上になるひざを約90度曲げ前方に出します(下図参照)。ただし、長時間同じ姿勢になっている場合には、傷病者の下になっている腕の血管や神経が圧迫され、障がいをきたすことがあります。したがって、回復体位は長時間の同じ向きを避け、定期的に反対向きにします。

横向きに寝た姿勢になっている男性のイラスト

回復体位

2.首の安静

自動車にはねられたり、高いところから落ちた場合、あるいは胸より上(頭側)に大きなけががある場合、傷病者が首の骨(頸椎)を痛めている可能性があります。このような場合には、傷病者の首の骨が動かないように安静にする必要があります。

首の安静を図るために、救助者が傷病者の頭を手で両側から包み込むように支えます(下図参照)。この場合、傷病者の頭を引っ張ったり動かしたりせず、そのままの姿勢で保持します。

寝た姿勢で、頭を両手で支えられている男性のイラスト

頭が動かないように両手で支える

3.酸素投与

市民が使う機会のある酸素には、市販の携帯型酸素や在宅医療で使用される医療用酸素などがあります。
これらの酸素を吸入させる場合でも、119番通報、気道(のどから肺への空気の通り道)の確保や呼吸の確認など、重要な対応の開始が遅れたり中断があったりしてはなりません。

4.気管支ぜんそく発作

気管支ぜんそくの発作時には、気管支とよばれる肺への空気の通り道が細くなり、呼吸が十分にできなくなります。
とくに、重篤な発作は致命的になり、迅速な対応が必要です。
そこで、ぜんそく発作がひどいと思ったら、ただちに119番通報してください。
気管支ぜんそくをもつ人は、発作時に使用する気管支拡張剤という吸入薬(口から吸い込む薬)が処方されている場合があります。通常は発作時に、傷病者が自分自身で使用します。
しかし、ぜんそく発作がひどい場合には、呼吸が苦しくて動けなくなることがあります。このような場合には、自分自身で薬を取り出したりすることさえも難しくなりますので、傷病者の求めに応じて吸入薬を吸えるようにしてあげます。

5.アナフィラキシー

ある特定の物質に対する重篤なアレルギー反応をアナフィラキシーといいます。気道(のどから肺への空気の通り道)が細くなって息ができなくなったり、血圧がひどく下がったりして致命的になることもあります。もし、このような症状が起きた場合は、ただちに119番通報してください。

このような場合には、アドレナリンという薬を一刻も早く使用しなければなりません。このため、過去にアナフィラキシーで重い症状がでた人のなかには、医師からアドレナリン自己注射器(エピペン(R))が処方されている人がいます。たとえば、ハチに刺される危険性の高い林業関係者や、食べ物にアレルギーのある子どもなどです。
症状が重く傷病者自身が使用できない場合には、傷病者の求めに応じてアドレナリン自己注射器を使用できるようにしてあげます。アドレナリン自己注射器が処方されている子どもに対して、救急救命士や、救命の現場に居合わせた教職員は本人に代わっての使用が認められていますので、使用できるように訓練しておくことが望まれます。

アドレナリン自己注射後は、症状が改善しても必ず医師の診察を受けてください。

6.止血

けがなどで出血が多い場合は、迅速かつ適切に止血できないと命の危険があります。市民が行う止血の方法としては、出血部位にガーゼや布などを当て、直接圧迫する方法(直接圧迫止血法)が推奨されています。止血部位を確認し、ガーゼ、ハンカチやタオルなどを重ねて出血部位に当てて、その上から圧迫して止血を試みてください(図参照)。圧迫にもかかわらず、ガーゼから血液が染み出てくる場合は、圧迫位置が出血部位から外れている、または圧迫する力が弱いなどが考えられるので、出血部位を確実に押さえることが重要です。

止血の際に、救助者が傷病者の血液に触れると、感染症を起こす危険性があります。このため、救助者は感染症から身を守るために、可能であればビニール手袋を着用するか、ビニール袋を手袋の代わりに使用してください。

なお、細いひもや針金で出血している手足を縛る方法は、血管や神経をいためる危険性があるので推奨できません。

ビニール手袋を着用した人がもう一人の腕にガーゼを当てて圧迫しているイラスト

ビニール手袋を着用してガーゼを圧迫する

ビニール袋を手に被せた人がもう一人の腕にガーゼを当てて圧迫しているイラスト

手袋の代わりにビニール袋を利用す

直接圧迫止血法

7.傷口の手当

土や砂などで汚れた傷口をそのままにしておくと化のうしたり、傷の治りに支障をきたす場合があります。可能であれば、傷口をすみやかに水道水など清潔な流水で十分に洗ってください。深い傷や汚れがひどい傷では後から破傷風を発症する心配もありますので、洗浄後すみやかに医師の診察を受けてください。

8.やけどに対する冷却と水疱(水ぶくれ)の保護

やけどに対する冷却は、痛みを和らげ、やけどの深さ、腫れ、感染、そして手術の必要性を減らします。このため、やけどをした後、すみやかに水道の流水で痛みが和らぐまで冷やしてください。ただし、氷や氷水により長時間冷却することは、やけどの部分を悪くすることがあります。やけどの範囲が広い場合、全体を冷却し続けると体温が極端に下がる可能性があるので、10分以上の冷却は避けてください

水疱(水ぶくれ)は傷口を保護する効果を持っています。水疱ができている場合は、つぶれないようにそっと冷却し、ガーゼなどで覆い医師の診察を受けてください。

9.骨折、ねんざ、打ち身(打撲)に対する手当

けがで手足が変形している場合は、骨折が強く疑われます。この場合は、変形した手足を動かさずに、そのままの状態で安静に保ちます。変形した手足を無理に元に戻そうとしないでください。移動する際に骨折部位が動いて痛みが強い場合には、変形した手足を固定することで痛みを和らげることができます。固定には添え木や三角幅などを利用して、できるだけ動かないようにしましょう。

ねんざや打ち身(打撲)に対しては、冷水などで冷却します。けがした部位の冷却は出血や腫れを軽くします。ただし、長時間の冷却は皮膚や神経を痛める原因となるので、20分以上続けて冷やすのは避けてください。氷枕などを使用する際には、皮膚との間に薄い布をはさんで、直接当たらないようにしてください。

10.歯の損傷

歯ぐきからの出血は、丸めた綿やティッシュペーパーなどで圧迫して止血を試みてください。抜けた歯は歯ぐきに戻さずに牛乳に入れて、すみやかに歯科医師の診察を受けてください。抜けた歯を持つときには、付け根の部分に触れないようにしてください。

11.熱中症

熱中症は、重症化すると死に至る緊急事態です。炎天下での作業やスポーツなどで発症するだけでなく、高温多湿な室内で高齢者に発症したり、炎天下の乗用車内に残された子どもに発症することもあります。

立ちくらみ、こむらがえり、大量の発汗といった症状だけなら、傷病者を涼しい場所で安静にし、水分・塩分(スポーツドリンクなど)を補給しながら体を冷却します。頭痛や吐き気、けん怠感があるときは医療機関を受診します。意識がもうろうとしている、体温が極端に高いなどの症状がある場合は、ただちに119番通報し、救急隊が到着するまで冷却を続けてください。

冷却するには衣服を脱がせ、体を濡らし、うちわや扇風機で風を当てるのが効果的です。氷のうや保冷剤で脇の下、太ももの付け根、くびなどを冷やすのも有効です

12.低体温・凍傷

(1)低体温

寒いところで体温が極端に低下すると命の危険があります。この場合、それ以上の体温の低下を防止することが大切です。救急隊や熟練の救助者を待つ間、まず温かい場所に移し、濡れた衣服は脱がせて乾いた毛布や衣服で覆ってください

(2)凍傷

凍傷は、指先や皮膚の露出部が強い寒冷にさらされて傷害を受けた状態です。まず、濡れた衣服は脱がせて、乾いた毛布や衣服で覆うなどして、体温の低下を防止します。次に、患部を擦らないようにして、ぬるま湯で温めます。凍傷部位は締めつけないでください。また、足が凍傷の場合には体重をかけないようにしてください。特に凍傷部位が再び強い寒冷にさらされる可能性がある場合や、医療機関が近くにある場合は、温めないですみやかに医師の診察を受けてください。

13.毒物

(1)毒物を飲んだとき

医薬品、漂白剤、洗剤、化粧品、乾燥剤、殺虫剤、園芸用品、灯油などは、中毒を引き起こす原因となる物質で、その初期対応は飲んだ物質によって異なります。したがって、毒物を飲んだ場合は、水や牛乳を飲ませたり、吐かせることはせず、最初に119番通報して指示を仰いでください。その際、毒物の種類、飲んだ時刻や量について情報があれば提供してください。

(2)毒物の付着

酸やアルカリなど毒性のある化学物質が皮膚に付いたり、目に入った場合はただちに水道水で十分に洗い流してください。これにより、傷害の程度を軽くすることができます。

14.けいれん

けいれんしている傷病者への応急手当のポイントは、発作中のけがの予防と発作後の気道確保です。
発作中は、けがを防止するため、家具の角や階段などの危険な場所から傷病者を遠ざけてください。けいれん中に無理に押さえつけると骨折などを起こすことがありますので、行わないでください。舌をかむことを予防する目的で、口の中へ物を入れることは効果がなく、歯の損傷や窒息などの原因となるので避けてください。救助者が指をかまれる危険性もあります。

けいれんが治まらない場合、またけいれんが治まった後で意識のはっきりしない状態が続く場合には、119番通報してください。救急隊を待つ間、回復体位にして気道を確保し、吐物で窒息するのを防ぎます。

15.溺水

溺れている人の救助は、消防隊やライフセーバーなどの救助の専門家に任せるのが原則です。溺れている人を見つけたら、ただちに119番(海上では118番)などで救助の専門家に通報します。水面に浮いて助けを求めている場合には、つかまって浮くことができそうなものを投げ入れてください。さらにロープがあれば投げ渡し、岸に引き寄せてください

水没したら、水没した場所がわかるように目標を決めておきます。そして、救助の専門家が到着したら、その目標を伝えます。水深が腰の深さ程度であれば、救助の専門家が到着する前に水没した人を引き上げます。ただし、水の流れがあるところや、水底が見えない場合は入らないでください。

心肺蘇生が必要な場合は、水中から引き上げてから開始します。水を吐かせるために溺れた人の腹部を圧迫しないでください。

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