伝統的建造物の修理工程
伝統的建造物の修理工程について、おおまかに説明します。
修理前

後年の改造により下屋が切り取られ、前面がパラペットで覆ってあり、旧来の姿が見受けられなくなりました。
修理の際は、まず初めに、昔の図面や写真を確認するほか、柱などに残っている痕跡の調査等を行い、昔の建物の形を想定し、復原図を作成します。ただし、当初この建物を使用していた形態と現在の使用形態が異なる場合(例:以前「店舗」、現在「住居」等)もありますので、山町筋の伝統的な意匠等と照合し、可能な範囲で調整を行い、最終的な設計図を作成します。
1.屋根

既存の屋根瓦のほか、当時の防火対策として載せてあった土もあわせて撤去します。

瓦、土が撤去された状態です。
このあと、下地材の張替え等がなされます。

防水用のルーフィングを設置した後、瓦を葺き直します。以前載せてあった土は、建物への加重が大きいため撤去します。
2.建物正面

正面のパラペットを撤去した状態です。昔の壁面が一部残っていました。

古い壁面に、そのまましっくいを塗ることができなかったので、下地の竹小舞からつくっています。

2階屋根の腕木部分や壁面にしっくいを塗ります。(下塗り・中塗り・上塗りの3工程)

下屋が撤去されていたため、新設による復原を行います。
1階下屋・袖壁部分にしっくいを塗っています。(下塗り・中塗り・上塗りの3工程)

1階下屋・袖壁部分の防火壁レンガを積み上げます。

玄関を建物の中から見ると、以前使用されていた「揚げ戸」が残されていたのが確認できます。

1階建具を整備する際、この「揚げ戸」も復原しました。
3.妻面(建物の横側)

トタンで覆ってあった壁面を撤去すると、昔の下地が出てきました。

壁面の下地部分を竹小舞で仕上げ、しっくいを塗ります。

以前は、左側に隣家があったため、壁面は大谷石積みとしっくいの下地処理だけでした。現在は空地のため、下見板張りとしました

大谷石を積み上げます。地震等の際の落下防止のため金具を取り付けます。
完成

昔ながらの姿に復原されました。
更新日:2024年03月25日