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更新日:2022年6月1日
いまから約400年前に加賀前田家二代当主の前田利長がこの地に高岡城を築いて、 高岡の町が開かれました。しかし、 開町からわずか5年で利長は他界し、一国一城令で廃城となった高岡城。三代当主の前田利常によって、 その熱い遺志は受け継がれ、やがて、町民のまちへと大きな転換を遂げていったのです。
高岡は北陸を代表する米どころとして知られる砺波平野、 射水平野を背後に控え、北は富山湾に面し、雨晴海岸からは海越しに3000メートル級の立山連峰を望むことができる、豊かな自然や食に恵まれたところです。 古くは旧石器時代まで遡る人々の営みがありました。
現在の高岡の基盤は、近世初期に形成されました。 加賀前田家二代当主の前田利長は、若き日に山城(守山城 )から俯瞰し、この高岡の地が要害としての軍事的な機能だけでなく、水陸交通の要衝として経済的な機能を合わせ持つ理想的な地であると見抜きます。そして慶長 14 年 (1609 )に、 隠居後の城として高岡城を築城。 利長はこの地で築城できる機会を心待ちにし、 驚異的な早さで建設工事を進めます。そして、 築城開始からわずか半年ほどで入城するに至りました。
利長は城下町の 一角に、 資材の集積と調達を行うための拠点(木町)を設けたり、砺波群の西部金屋から7人の鋳物師を招き、鋳物づくりを行う鋳物師町(金屋町)をつくりました。鋳物師には地租を課さない厚い保護や特権を与え、鋳物づくりを奨励することで、城下町としてその繁栄を図ったのです。
高岡城を創建して、 その後400余年に渡る高岡市の発展の土台を築き上げた利長でしたが、 在城わずか5年で他界。家臣団はことごとく金沢に引き揚げ、さらに翌年の 一 国一 城の令により、 高岡城は廃城という過酷な運命へ。城下町の歩みを始めていた高岡は、たちまち絶望の淵に突き落とされたのでした。
城下町として存続の危機に陥った高岡。そこで、 三代当主 ・ 前田利常は、 活を入れて高岡のまちを立て直します。 高岡町民の他所転出を禁じ、 高岡を麻布の集散所へ、さらに、 御荷物宿、商問屋や塩問屋の創設を認め、城跡内には米蔵と塩蔵を設置するなど、商工業都市へ の転換策を積極的に講じました。
利常は、 利長が高岡に相当の希望をかけていたことを知っていました。利常は、商業都市への政策転換を進めるうえでも、利長が築き上げた町割りなどを生かした形で行いました。異母兄弟である自分に家督を譲った利長への恩義を深く感じ、利長の菩提のために壮大な伽藍建築の瑞龍寺や、異例の規模を誇る墓所もつくりました。利長の遺徳をしのぶだけでなく、まちの繁栄を願って建立したものです。
また、利常は高岡が軍事拠点としての機能を失うことがないよう、高岡城内には平和的利用として米塩の藩蔵を建てました。これにより、幕府に干渉の口実を与えず、いざというときに備えて、城の郭や堀は完全な形で残すことに成功しました。利常の優れた経営手腕は、高岡に数多く残る関連文化財群に垣間見ることができます。
高岡町民も利常の保護と期待に応え、高岡は商人 ・ 職人のまちとして、着実に歩みはじめました。鋳物づくりでは最初は、 鍋 ・ 釜などの生活用具、 農具の鉄器具類が多くつくられていましたが、 次第に、 香炉 ・花瓶 ・ 火鉢 ・ 仏具などの文化的な品物の需要が高まり、 装飾に富んだ製品がつくられるようになりました。銅器製造が盛んになると、 北前船( バイ船 )で全国各地に販路を確保し、海外貿易にも進出。伏木港は加賀藩全体の物資の集散地となり、北前船の寄港地としても栄え、高岡は「加賀藩の台所」として隆盛を極めました。そうして財を成した豪商たちが絢爛たる装飾を競い合ったのが、 御車山祭。7基の御車山には彫金 ・ 漆工 ・染織など高岡の伝統工芸の粋を集めた豪華な装飾が施されました。 長年、 町ごとに競いあう中で現在のような豪華なものに。ともにまちの発展に貢献してきた町民の心意気の象徴です。
高岡の発展は町民自身が担い手となり、 地域に富を還元してきたことが特徴です。近代以降、明治の文明開化などの時代の変遷を経ても、町民は商売の実力を存分に発揮。事実、維新後は県庁所在地ではないハンディキャップを負いながらも、常に日本海側屈指の商工業都市として気を吐いてきました。また最近では、鋳物業などの伝統産業は、繊細な技術や暮らしに合った最先端のデザインで、全国的に注目を集めています。現在でも、町割り、街道筋、町並み、生業や伝統行事などに町民の歩みが独特の気風として色濃く残る高岡。町民の心意気は、いまも人々に受け継がれています。でも、まだ高岡は発展の途中。歴史資産を生かした新たな文化や魅力の創造に、力強く歩き始めています。
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